経験記述とは
経験記述とは、自身が経験した土木工事について、施工管理上の課題と対応策を記述する問題です。第二次検定の問題1として出題され、合否を左右する最重要問題となっています。
経験記述が重要な理由
- 経験記述が合格基準に達していないと、他の問題は採点されない
- 配点が非常に高い(全体の約40%程度)
- 事前準備なしでは合格点を取ることが極めて困難
- 実務経験と技術力が直接評価される
試験問題にも「経験記述の解答が無記載又は記述漏れがある場合は、以降は採点しない」と明記されています。
令和6年度からの変更点
令和6年度から1級土木施工管理技士の経験記述は大幅に変更されました。この変更を理解していないと、試験当日に慌てることになります。
変更の背景
全国建設研修センターは、令和6年度以降の試験問題見直しについて以下のように発表しました。
「受検者の経験に基づく解答を求める設問に関し、自身の経験に基づかない解答を防ぐ観点から、幅広い観点から経験を確認する設問として見直しを行う」
つまり、経験していない内容を丸暗記で解答することを防ぐための変更です。
出典:一般財団法人 全国建設研修センター「令和6年度以降の施工管理技術検定試験問題の見直しについて」
主な変更点
| 項目 | 令和5年度まで | 令和6年度から |
| テーマ数 | 1つ | 2つ(設問1・設問2) |
| 記述行数 | 27行 | 16行×2問 |
| 記述量 | 750字程度 | 500字程度×2問 |
| 出題内容 | 1テーマを詳細に記述 | 2テーマをそれぞれ記述 |
出典:独学サポート事務局「1級土木施工管理技士の経験記述は難しい?」
令和6年度の実際の出題内容
令和6年度の第二次検定では、以下のような出題がありました。
設問1:安全管理
- 技術的課題と検討項目
- 対応処置とその評価
設問2:施工計画
- 施工計画立案に先立って行った現場の事前調査で判明した施工上の課題
- 課題に対して施工計画の作成にあたり反映した対応処置とその評価
「施工計画」という新しいテーマが追加され、受験者に大きな影響を与えました。
出典:施工管理チャンネル「1級土木施工管理技術検定|第二次検定の経験記述変更点」
出題テーマと傾向
経験記述で出題される可能性があるテーマは以下の5つです。
出題テーマ一覧
| テーマ | 内容 | 出題頻度 |
| 安全管理 | 労働災害・第三者災害防止の対策 | 高い |
| 品質管理 | 設計品質確保のための管理 | 高い |
| 工程管理 | 工期内完成のための工程管理 | 中程度 |
| 施工計画 | 施工計画立案時の検討事項 | 令和6年度から出題 |
| 出来形管理 | 設計寸法・形状の確保 | 低い |
過去10年以上、「品質管理」と「安全管理」が中心に出題されてきましたが、令和6年度から「施工計画」が新たに出題されました。今後は複数テーマへの対策が必須となります。
工事概要の書き方
経験記述では、まず工事概要を記載します。この部分は令和6年度も変更ありません。
工事概要の記載項目
| 項目 | 記載内容 | 注意点 |
| 工事名 | 契約工事名または工事内容がわかる名称 | 土木工事であることが明確にわかるように |
| 発注者名 | 発注機関名 | 下請の場合は元請業者名 |
| 工事場所 | 都道府県名、市郡名、町村名 | なるべく詳しく記載 |
| 工期 | 契約工期 | 2ヶ月以上の工事を選ぶ |
| 主な工種 | 経験記述で取り上げる工種 | 設問と整合性を取る |
| 施工量 | 数量(㎥、㎡、mなど) | 具体的な数値を記載 |
| あなたの立場 | 現場での役職・担当 | 監理技術者、主任技術者など |
工事選定の注意点
- なるべく規模の大きい公共工事を選ぶ
- 工期2ヶ月以上の工事を選ぶ(1級にふさわしい規模)
- 過去1〜5年程度に完成した工事を選ぶ
- 10年以上前の古い工事は避ける
- 現在施工中の工事は避ける
- 土木工事かどうか判定しにくい特殊な工事は避ける
新しい出題形式への対策
設問1(従来型テーマ)の対策
設問1は従来の経験記述に近い形式ですが、記述量が縮小されています。
記述の構成
- 技術的課題と検討項目(簡潔に)
- 対応処置とその評価
従来は「技術的課題」「検討項目」「対応処置」の3項目でしたが、2項目に縮小されました。より簡潔で的確な表現が求められます。
設問2(施工計画)の対策
設問2は令和6年度から新たに追加されたテーマです。
施工計画で問われる内容
- 現場の事前調査で判明した課題
- 施工計画への反映内容
- 対応処置とその評価
事前調査の項目例
| 調査区分 | 調査項目例 |
| 契約条件 | 工期、施工条件、設計図書、仕様書 |
| 現場条件 | 地質調査、地下水位、周辺環境、搬入路、仮設ヤード |
| 関係機関 | 許認可、協議事項、地元調整 |
経験記述の例文
安全管理の例文
技術的課題と検討項目:
本工事は、国道○○号線のバイパス建設工事において、高さ8mの切土法面を施工するものであった。切土法面の直下には市道があり、通行車両や歩行者への第三者災害防止が課題であった。落石防止対策と施工中の安全確保について検討を行った。
対応処置とその評価:
法面下端に高さ2mの仮設防護柵を設置し、切土作業前に地山の浮き石を除去する手順を定めた。また、発破作業時は市道を一時通行止めとし、警備員を配置した。これらの対策により、工事期間中の落石事故は発生せず、第三者災害を防止することができた。
施工計画の例文
事前調査で判明した課題:
本工事は、○○川護岸工事において、延長200mの護岸ブロック積みを施工するものであった。現場の事前調査の結果、地下水位が高く、掘削深さ2.0m以下では湧水が発生することが判明した。また、搬入路の幅員が3.5mと狭く、大型車両の通行が困難であることがわかった。
施工計画への反映と対応処置:
湧水対策として、ディープウェル工法による地下水位低下を施工計画に反映した。搬入路については、4tダンプへの積載量制限を設け、搬入回数を増やす計画とした。これらの対策により、工程遅延なく護岸工事を完了させることができた。
合格のためのポイント
1. 複数テーマの準備
令和6年度から2テーマが出題されるようになったため、最低でも以下の4テーマについて記述を準備しておく必要があります。
- 安全管理
- 品質管理
- 工程管理
- 施工計画
2. 簡潔で的確な表現
記述行数が減少したため、より簡潔で的確な表現が求められます。
- 文末は「である」調に統一する
- 具体的な数値を入れる
- 専門用語を適切に使用する
- 冗長な表現を避ける
3. 自身の経験を整理する
丸暗記では対応できない出題形式になったため、自身の施工経験を多角的に整理しておくことが重要です。
- 過去に担当した工事を振り返る
- 各工事での課題と対応策を整理する
- 複数のテーマで記述できるよう準備する
4. 添削を受ける
経験記述は自己採点が難しいため、第三者による添削を受けることをおすすめします。
- 通信講座の添削サービス
- 会社の先輩や上司
- 同じ試験を受ける同僚
試験当日の時間配分
第二次検定の試験時間は2時間45分です。経験記述に時間をかけすぎると、他の問題を解く時間がなくなります。
| 問題 | 目安時間 |
| 経験記述(問題1) | 60〜70分 |
| 学科記述(問題2〜9) | 80〜90分 |
| 見直し | 15〜25分 |
令和6年度は経験記述の量が増えたため、多くの受験者が最後まで試験会場に残っていたという報告があります。時間配分には十分注意が必要です。
合格率の推移
| 年度 | 第一次検定合格率 | 第二次検定合格率 |
| 令和6年度(2024年) | 44.4% | 41.2% |
| 令和5年度(2023年) | 49.5% | 33.2% |
| 令和4年度(2022年) | 54.6% | 28.7% |
令和6年度の第二次検定合格率は41.2%と、前年度より上昇しています。出題形式の変更があったものの、適切な対策を行えば合格は十分に可能です。
まとめ
1級土木施工管理技士の経験記述は、令和6年度から大きく変更されました。主な変更点は以下の通りです。
- テーマが1つから2つに増加
- 記述行数が27行から16行×2問に変更
- 「施工計画」という新テーマが追加
合格のためのポイントは以下の3点です。
- 4テーマ以上の記述を事前に準備する
- 簡潔で的確な表現を心がける
- 自身の施工経験を多角的に整理する
丸暗記では対応できない出題形式になったため、自身の経験を文章で伝える技術を身につけることが重要です。十分な準備を行い、合格を目指しましょう。